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特別対談

新たな価値を創造するトップイノベーターたち

さまざまなジャンルで「イノベーター」と呼ばれるキーパーソンをお招きして、"イノベーション"が創り出す価値とその重要性を紹介してゆく連載対談企画。
第九回は、家電・家具ブランドを設立、企画から僅か二か月という短期間で24もの自社製品を発表し業界内外を騒然とさせた株式会社UPQ(アップ・キュー)代表取締役の中澤 優子さん。

設立当時は弱冠30歳の女性社長ということで世間の注目を集めました。中澤さんが目指したのは“新しいモノづくりの在り方”ではなく、“価値あるモノをつくる”というモノづくりへの原点回帰。そんな中澤さんのモノづくりへの熱意と意志、そして覚悟についてお話しいただきました。

モノの価値が適切に評価されるモノづくりがしたい

自分たちがつくったものを愛し、誇り、使う“真っ当なモノづくり”

川崎 中澤さんがそもそも「モノづくり」の世界に挑戦しようと思ったきっかけは何だったのでしょう?

中澤 もともとは文系学生だったんですけど、就職活動でさまざまな業界・職種を見る中で、モノづくりが一番自分にしっくりくると感じたんです。「ああでもない、こうでもない」と議論しながら一つの製品を生み出し、世の中に影響を与えられるこの仕事が何よりも楽しそうだな、と思いました。

入社して思ったのは、みなさん本当に自分たちがつくったものに愛着を持って使っているんですよね。携帯電話はメーカーとユーザーの間にキャリアや商社、販売店などが入ります。キャリアに納品したら自分たちの手から離れてしまうので、社割とかもないんですよ。でも、エンドユーザーとして自社製品を定価で買って、すごく誇らしく大切に使う。そういうシーンを見て、ここではものすごく真っ当なモノづくりのサイクルが回っているんだと感動しました。

既存のルールや常識にとらわれずとも、モノが良ければ売れる時代

川崎 しかし、携帯電話の普及も頭打ち、iPhoneの登場など、携帯市場に大きな変化があった背景で苦しい経験もされたと思いますが。

中澤 カシオに入社したときにはすでに「つくれば売れる時代」は終わっていて、「これからは厳しい時代になる」と先輩には言われました。それでも自分たちの製品に自信と愛着を持ち、世に送り出し続けていました。けれど、入社前から感じていた、他社に負けじと一つでも多くの機能を詰め込んだ機種を企画・開発することに疑問と違和感はぬぐえなかった。そしてとうとう、会社が携帯電話事業から撤退することになり、私も同時に退職を決意しました。

川崎 自分たちが本当につくりたいもの、いいと思うものを世に出すんだ、という強い想いがあったからこその幕引きだったのでしょう。競合メーカーがどうとか、市況がどうとかよりも、当事者たちの想いや熱が、きっとお客さまに求められるサービスや製品を生み出していく。
我々のサービス「バリューチェーン・イノベーター」が生まれたときも、市場背景や業界動向などの前に、「自分たちがどうしたいのか、本当にお客さまが求めるものは何なのか」を主観的にひたすら考えてもらいました。

そして今、中澤さんが取り組まれていることは、世間からは「イノベーティブだ」「斬新だ」と評されることもあるかと思いますが、ご自身としてはどう感じていますか?

中澤 全く逆で、むしろ古いスタイルだと思っています。昭和からのモノづくりを受け継いで、現代だからこそ実現可能な方法を選んできただけ。

一緒に働いていたメーカーの大先輩方が、アップルやGoogle、SUMSUNGが台頭してきたときに「英語が使えないから敵わない」「モノではなくサービスの時代にオレたちはセンスがない」と肩を落とすのを見てきました。それだけを負い目に感じて英語を勉強し始めるのですが、自分たちの強みはどこに行ったの?と。 たしかに今は、“インターネット回線の契約をすればWi-Fiルータが無料”というように、サービスが重視されてモノの価値が低くなっていると感じることが多々あります。私はこれまでの日本がそうであったように、しっかりと“モノの価値”が評価されるモノづくりがしたかったんです。面白いと感じるモノ、価値あるモノを沢山つくってきたんだから、誇りを持って伝えていきたい。

モノづくりのことを何も知らない女の子がやってきて、「ほら、モノづくりって誰でもできるんですよ~!」と旗を振っているように見えるかもしれませんが、そうじゃない。モノづくりの在り方が少しずつ変わってきた世の中で、みんなが大切にしてきたモノづくりをこういう形で実現できるということを示したいんです。
とにかくハイペースで多くの製品を出していく、とか、国民全員が持つような製品を生み出すということは目標にしていません。面白くて、遊び心のあるものを、既存のルールや因習にとらわれずに発表していく。モノがよければ、ちゃんと売れることが証明できています。

所属に関係なく、ともに議論できる仲間たちとモノづくりを続けたい

川崎 私も仕事柄、海外の方々と接することも多いのですが、今もなお「Made in Japan」というだけで大きな価値がある。その誇りを忘れてはいけませんね。現代の日本のモノづくり市場を見て、中澤さんのような方は少ないと感じますか?

中澤 私と同じような想いを持っている人ってたくさんいるんです。面白いモノをつくって世に出していきたい、とみんな思ってる。けれど、その人たちがメーカーという大きな組織を動かせる強い影響力を持っているかどうかというとそうじゃないことが多いと感じています。

川崎 組織の中にいると、あらゆるしがらみの中で思い通りに動けないことは決して珍しくない。そもそも問題に気づかないこともある。その中で想いが消えてしまったり、改革が進まないことも多くあるでしょう。
当社のエンジニアはお客さま先に派遣され、お客さまとともに業務を行うわけですが、第三者だからこそ発見できる問題や提案できることがあります。

中澤 私はUPQ設立前にフリーでコンサルティングを行っていましたが、第三者だから見えることもありつつ、実際に改革するのであれば内側から動かないとだめだな、と実感しました。コンサルだからこれ以上は踏み込めないとか、そういうことにものすごく違和感を覚えました。

川崎 たしかにコンサルティングだと提案した解決策をともに現場で進めることはできず、第一線で改革していくことは難しいですね。しかし、日々ともに働く派遣社員であれば解決に向けたアクションまで責任を持って実行できる。第三者だけど中にいるという派遣の働き方は、モノづくりの改革を進めていく上で非常に大きな強みです。

派遣社員が外側からではなく内側から問題発見から提案・実行を行っていくというサービスは、お客さまのビジネスに大きな革新の可能性をもたらすと信じています。

中澤 「仲間」として現場視点を大切にしながらも第三者視点があるというのは頼もしいですね。カシオ在籍時も多くの協力会社の方々と一緒に働きましたが、みなさん、「カシオらしさとは」って熱く語るんですよね。社内の方ではないのを知ったのはその方の送別会のとき、ということも多々ありました(笑)。モノづくりにおいて所属や雇用形態なんて全く関係ないんですよね。今は海外の工場のみなさんと「UPQらしさ」について熱く議論しています。

川崎 ブランドの「らしさ」を語れるという視点も、自信を持っていいモノを世に出していく上では非常に重要ですね。

中澤 「らしさ」が失われてしまうとブランドは死んでしまいます。今は企画をしているのが私一人なので、今後は「UPQらしさ」を理解し、製品を企画できる人財を育成していかなければと思っています。 これからも、その「UPQらしさ」を追求し、新たな価値を世の中に送り続けていきたいと思います。
本日は日本のモノづくりの現場を改革していく、頼もしいサービスについて聞くことができ、嬉しく思います。立ち位置は異なりますが、一緒に盛り上げていきましょう。

中澤 優子(なかざわ・ゆうこ)さん プロフィール

株式会社UPQ 代表取締役

1984年東京都生まれ。2007年にカシオ計算機に新卒入社。
携帯電話やスマートフォンの商品企画を担当する。その後、同社の携帯電話事業からの撤退をきっかけに退職し、フリーランスで商品企画やコンサルティングを行いながら13年にカフェをオープン。2015年7月にUPQを設立する。

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