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特別対談

新たな価値を創造するトップイノベーターたち

さまざまなジャンルで「イノベーター」と呼ばれるキーパーソンをお招きして、“イノベーション”が創り出す価値とその重要性を紹介してゆく連載対談企画。
第六回は、“知識製造業”として、科学技術をコアにしたさまざまな事業を展開する株式会社リバネスの代表取締役社長 COO 高橋 修一郎さん。
多くの研究者や企業とともに「知識プラットフォーム」を形成し、そこに集まる専門知識や最先端技術、そして研究者やエンジニアなどの人々をつなぎ、組み合わせることによって社会に価値を創出する、という先進的な取り組みを行う同社。双方が受賞した「KAIKA Awards 2015」をきっかけに、“イノベーションを起こせる人財と組織”について熱い議論が交わされました。

個々の “情熱”が結集し、社会に新たな価値を生み出す

客観的分析からではなく、自分がなにを「やりたい」か

川崎 高橋さんをはじめ、リバネスさんは「研究者集団」ということで、エンジニア集団であるVSNと類似する文化があるのでは、と感じています。「科学技術の発展と地球貢献を実現する」という明確な経営理念を掲げられていますが、これは設立当初から変わっていらっしゃらないのでしょうか?

高橋 そうです。設立時は修士学生時代まで遡りますが、そのときに経営理念を掲げて以来、一度も変えようと思ったことはないです。「科学技術」と言っていますが、近年では在籍する社員の専門知識も科学だけでなく、社会学や心理学、人文学などにも広がっています。分野ごとに組織を区切ってしまうのではなく、分野横断的にいろいろなタイプの人が集まっているからこそ、それがイノベーションにつながる。専門性を売りにしている企業でここまで多様な専門性を持つ人材が集まっているのは、当社が持つ強みの一つだと思っています。

川崎 そしてリバネスさんでは「QPMIサイクル」という独自のサイクルを提唱していますよね。これがとても興味深い。「質(Quality)の高い課題(Question)を見つけた個人(Personal)の情熱(Passion)が、仲間(Member)を集め、チームの目的(Mission)となる。全員で解決に向かい試行錯誤を続けることで、革新(Innovation)や発明(Invention)につながる」というものですね。

高橋 これも設立間もない頃に生まれた考え方なんです。最初に事業として始めたのが学校に出前実験教室を提供する、というものなのですが、なかなかうまくいかない。じゃあ、何をすべきなのかと、多角的に分析を行い、さまざまなデータや市況などを徹底的に検証し「この事業にニーズがあるだろう」という点までは絞り込めるのですが、そこからのモチベーションがどうしても上がらない。
結局、自分たちがやりたいのはやっぱり教育なんだ! という強い想いの再確認につながり、最終的には各企業のCSRや人材育成ニーズを捉えての事業化に至りました。
このときに確信したのが「こうすれば成功する」「ここにビジネスチャンスがある」という理由からスタートするのではなくて、誰かが陣頭指揮を取り、「これをやるんだ!」という情熱を軸に取り組まないとまったく面白みがないし、そこに周囲を巻き込めない、結果としてイノベーションも起こせない、ということでした。
研究者もそうなんですよね。研究テーマに明確な目的があることもありますが、ベースにあるのは「知りたい」「突き詰めたい」「極めたい」という知的好奇心やパッションなんです。我々が研究者集団として強いと思うのは、メンバーみんながそのパッションとともに研究を重ねてきたプロ組織だから。
もともとは社内での合言葉だったんですが、最近は外に向けてもよく発信していて、少し波及してきたかな、と(笑)。「PDCAサイクル」の前にあるものなんですよね。1を10、10を100にするには「PDCA」でいいんです。しかし今、時代が求めているのは「ゼロから1を生み出すこと」。そのときに必要なのが「QPMI」なのです。

熱の連鎖が化学反応を生み、うねりを作る

川崎 VSNでも全く同じような議論がありました。VSNでは「バリューチェーン・イノベーター(以下「VI」)」という、派遣エンジニアによるお客様に対する問題提起・解決策の実行を通じて、お客様の事業にイノベーションを起こす、というサービスを推進しています。誕生のきっかけはリーマン・ショックでした。エンジニアの約4割が契約終了となった”100年に1度の大不況“。もし今後、再度日本が不況の波に襲われたとき、お客様や社会に必要とされ続ける強い企業であるために、私たちは“何屋”となるべきなのか―そこにエース社員たちが集まり、考え抜いて出した答えがVIでした。
このときに軸にしていたのが、「マーケティングや外部分析などの客観的データや数字からだけではなく、私たちがどうありたいのかを主観的に考えよう」ということでした。まさに情熱、パッションですよね。
頭でっかちに考えるのではなく、まず“どうありたいのか”という問いと、情熱から始まる。それがイノベーションのスタートですね。

高橋 面白いもので、「熱」を持つ人は他人からの「熱」も受け取りやすいんですよね。だから熱を持った人同士はすぐにつながる。巻き込み力と巻き込まれ力はイコールだと感じます。
さまざまな分野や立場の熱を持った人たちがつながっていくと、想像もしていなかった化学反応が生まれて社会を変えていくと考えます。

川崎 たしかに。VIも当初はそういった効果はなかなか得られませんでしたが、熱を持って取り組む社員がいると、周りにどんどん火を灯していくんですね。数名の社員によって私についた火が、また別の社員に火を灯し、それが次々と広がっていく。VSNだけでなく、これを産業界全体に広げていきたいと考えています。

技術×コミュニケーションで生まれるイノベーションの種

高橋 VIで興味深いのは、技術力の提供にとどまらず、コミュニケーションや分析などからより大きな価値を生み出す、という点ですよね。
というのも、研究者はソリューションを生み出すのは得意なのですが、それを誰にでもわかりやすく伝える、というのが不得手なタイプが多いんです。例えば、小学校で出前実験教室をするにも、専門的知識を彼らがわかる形で説明できるかというと、それはとても難しい。科学技術を社会に活用していくという場面では、知識レベルも立場も違う人たちに橋をかけ、コミュニケーションできる力を育成するということが、ソリューションを創り出すのと同様、非常に重要だと感じました。
学校だけではなく、企業にも同じことが言えます。技術部門と営業部門が効果的なコミュニケーションを図り、お互いを理解していることは実は稀なのです。コミュニケーション力の向上が、そのまま社員や研究者・技術者の育成にもなる。この伝達能力を我々は「サイエンス・ブリッジ・コミュニケーション」と呼んでいます。

川崎 部門をまたいで架け橋となることは確かにとても重要で、価値のある存在だと思います。第三者として、立場の違うAとBのそれぞれを明確に理解し、つなげてしまう。しかもリバネスさんでは社内だけをつなげるのではなくて、プラットフォームを形成することで社外にも多くの架け橋を作っていますね。

高橋 研究者や学生、スタートアップ企業や大手企業などが集まり形成されているのが“知識プラットフォーム”。彼らがさまざまなプロジェクトを通じてコラボレーションし、新しい価値を生み出しています。そこにあるのはまさに「オープン・イノベーション」です。VSNさんもよく感じられるかもしれませんが、社内では当たり前になってしまって気づかないことってたくさんあるんです。それが外部からの風が入ることでガラリと変わることがある。いろいろな横串や、風の通り道が多ければ多いほど、イノベーションの種は増えると思います。過去の成功体験や、今あるルールに囚われていては何も前に進みませんね。

川崎 私たちも、“指示された業務のみを行う”というイメージの強い派遣社員が、お客様の課題を指摘し、解決策を提案するという、今までには存在しなかったことを行っています。お客様の事業に、そして産業界にとっての“新たな風”となり、大きな驚きをもたらしていきたいと思います。

高橋 アプローチは違ったとしても、目指す未来は非常に近いはず。お互いの“熱”をどんどん社会に発信し、世界を変えるプロジェクトを次々と生み出していきましょう! そして何かの形でぜひご一緒したいですね。

新しいウィンドウを開きます「KAIKA Awards 2015」特設サイトにも特別対談が掲載中です。

高橋 修一郎(たかはし・しゅういちろう)さんプロフィール

東京大学大学院新領域創成科学研究科博士課程修了 博士(生命科学)。
設立時からリバネスに参画し、教材開発事業やアグリ事業の立ち上げを行う。大学院修了後は東京大学教員として研究活動を続ける一方でリバネスの研究所を立ち上げ、研究開発事業の基盤を構築した。さらに独自の研究助成「リバネス研究費」のビジネスモデルを考案し、産業界・アカデミア・教育界を巻き込んだオープンイノベーション・プロジェクトを数多く仕掛ける。2010年より代表取締役に就任。

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