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特別対談

新たな価値を創造するトップイノベーターたち

さまざまなジャンルで「イノベーター」と呼ばれるキーパーソンをお招きし、“イノベーション”が創り出す価値や重要性について紹介してゆきます。
第一回は“日本イノベーションの第一人者”である一橋大学イノベーション研究センター教授・米倉 誠一郎さんに今後の展望をお聞きしました。

“人財”のイノベーションがつくるニッポンの未来

技術力だけではない新しいエンジニアの働きかた

川崎 長きに渡り「イノベーション戦略」を研究されている米倉さんから見て、VSNが現在取り組んでいる「バリューチェーン・イノベーター」についての率直な印象をお聞かせください。

米倉 結局、バリューチェーンは“人”によって創り出されるものなので、エンジニアも「技術」以上に“人”ありきなのでしょう。
コンサルのできるエンジニアなんて、少し前では考えられなかった。
それらを考えると、エンジニアって一つの会社に留まっているより、さまざまな現場でイノベーションを次々に起こしていくほうが、企業にとってもエンジニアにとってもより高い価値提供ができるのではないかと思います。

川崎 実際、当社のエンジニアからもそういった声は少なくありません。
一つのメーカーに長く在籍し、設計から開発、生産、品質保証などを経験したくても思い通りにいかないケースもあります。
弊社のエンジニアは「VSNの正社員」でありながら、さまざまな企業で多くの経験と結果を残すことができる。
エンジニアにとっては理想的な働き方だと思います。

米倉 フリーランスのようなワークスタイルで働くエンジニアがバリューアップしていくほうが現代の時代には適しているし、今後はそういう働き方が主流になったほうがいい。
VSNのエンジニアは新しいイノベーションモデルを一つ確立させた訳ですね。

複雑化する企業の課題を解決する革新的イノベーション

川崎 2008年のリーマンショックの際、我々も、それまで経験したことのない大きな影響を受けました。
しかし、あの時の経験が一つのきっかけとなりVSNではエンジニア自らが「どうすれば新しい価値を生み出せるのか」、を徹底的に考え抜いて「バリューチェーン・イノベーター」という1つのビジョンが誕生しました。

米倉 本来、“技術屋”であるはずのエンジニアが経営者の視点を持ち、ビジョンに真剣に向き合う。シンプルですが、なかなか面白い取り組みですよね。
イノベーションの重要性は年々高まってきていますが、実際「バリューチェーン・イノベーター」はその後のVSNにとってどのような変化を起こしたのでしょうか?

川崎 このビジョンを掲げた当初、お客さまの立場を考えると「余計なことはするな。派遣はお願いしたことだけをやっていればいい。」そう言われるに違いない、と社内からは反対意見が大多数でした。

しかし、実際に提案していくと、「自社の課題は複雑化している。第三者からの客観的意見は貴重な課題発見に繋がった。」と、お客さまから高い評価をいただき、会社同士の距離感も縮まりました。
そして、エンジニアの働き方も受動的から主体的に変わり、それによる新しい仕事の喜び、やりがいを感じています。
現在では全社員が結集し、それに取り組み、年間で200件を超えるお客さまに提案し、合意をいただいています。
私たちが今後10年先も20年先も変わらず、お客さまから支持していただける会社であり、またエンジニアにとって高い働きがいのある会社であり続けることを目指しています。

米倉 企業の課題が複雑化、専門化する中で技術力のみならず、クライアントの抱える課題発見・解決に導く、というバリューチェーンは革新的だと思うし、なによりそれらをエンジニア自らの力で創り築き上げたというところに大きな価値を感じます。

「人財育成」「教育環境」のイノベーションが持つ必要性

米倉 日本人は「変わること」に対して抵抗が強い傾向があります。
しかし、それではイノベーションを阻害しているし、日本経済はダメになると私は思います。
1964年、東京オリンピックがあった頃の日本の人口って9,700万人なんですが、現在1億2,700万。
単純に50年で3,000万人増えている。3,000万人ってペルーとかマレーシアの人口と同じ規模なんです。日本は、人口が増え、そして高度経済成長を遂げてきた。
何が言いたいかと言うとそこには絶対に「人の力」がバリューを創り、底上げしてきたということです。
今は優れたITシステムを創り出すことばかりに企業は力を入れている。実はそれって本当に必要なことの正反対の動きをしてるんですよね。日本経済が本当に良くなっていくには「人(人財)」に対する投資が必要なのです。

川崎 おっしゃるとおりだと思います。
私も経営者の一員として、多くの可能性を持つ「人」を積極的に採用し、そして育成していくことで、「人」の力で組織や世の中を変革していかなければならない、と強く感じています。

米倉 日本の教育は一度、根源からしっかりと見直さなければならない。 テクノロジーがこれだけ進化を遂げているのに授業のスタイルはさほど変わっていない。
教育現場にイノベーションを起こすためにもエンジニアを公務員としてどんどん採用していけばいいと思う。 外部人材の雇用は教育現場を変える可能性がある。
例えば「なんで、こんな形式の会議をやるのですか?」とか「これは紙じゃなくてExcelで作れば瞬時に処理できます。」とか。企業が「人」に投資するのと同様に、教育現場でも、「人」にもっと投資すべきですね。

川崎 わたしたちが掲げている理念を一言で云うと「人財育成を通して、人と社会に貢献しよう」というものなのですが、VSNでは「教育」というキーワードをこれまで大切にし、エンジニアの育成教育にも力を入れています。
しかし、社会に出てから教えられる事にはやはり限界があります。 教育現場でのイノベーションは今後の日本経済を考えると私も不可欠だと感じます。

米倉 特に“情報創造能力”という自ら問題を作って自分でそれを解く力は早いうちから身に付けておいたほうがいいでしょう。
どんな仕事でも自分の付加価値を創り出せる人は、いずれそれが大きな強みになっていく。
そこから更に自分の能力を伸ばしていくと見えてくる景色もきっと変わってきます。 教科書どおりにやるのではなく、自分で考えて実行する。
エンジニアは手掛ける製品への想いや愛情、そして知識がある。そうした想いをベースに、問題を発見・理解し、それを解決するという循環こそ、まさに“情報創造能力”だと言えます。

VSNの人財育成への姿勢、そして「バリューチェーン・イノベーター」のビジョン。こうした強みを磨くことは、強い競争優位性に繋がるし、イノベーションから、より新しい可能性が広がるのではないかと感じます。
自信と信念、そして誇りを持って今後もさらに新たな革新を起こし続けていってください。期待しています。

米倉誠一郎(よねくら・せいいちろう)さん プロフィール

一橋大学 イノベーション研究センター 教授

1995年一橋大学商学部産業経営研究所教授、97年より同大学イノベーション研究センター教授。
2012年~2014年12月まで、プレトリア大学GIBS日本研究センター所長。
アーク都市塾塾長を経て、2009年より日本元気塾塾長季刊誌『一橋ビジネスレビュー』編集委員長も務める。
イノベーションを核とした企業の経営戦略と発展プロセス、組織の史的研究を専門とし、多くの経営者から熱い支持を受けている。
著書は、『創発的破壊 未来をつくるイノベーション』、『脱カリスマ時代のリーダー論』、『経営革命の構造』など多数。

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