INTERVIEW

2017.11.14

「小学校におけるプログラミング教育のありかた」
教育関係者のみなさまへ伝えたいこと

2020年、小学校におけるプログラミング教育の必修化を迎えるにあたって、全国の教育関係者の多くの方がまだ取り組み方を模索している状況です。ICT教育に関する講演や論文を数多く発表されている東京学芸大学 准教授 北澤 武先生に「小学校におけるプログラミング教育のありかた」をインタビュー、教育関係者のみなさまにお届けします。

なぜ、小学校でプログラミング教育を行う必要があるのでしょうか

近年のITテクノロジーの日進月歩はご説明するまでもなく、今、存在している職業がなくなり、存在していない職業が増えていくことが予見されています。将来、既存の職業は、次々とコンピュータで処理され、どの職業もネットワークに紐づき、AIやIoTがより身近になる世の中へと大きく変化していくことでしょう。

現在、日本の教育において、中学校では「技術・家庭科」で、高等学校では共通教科「情報科」で情報技術やプログラミングに関する単元がありますが、小学校では教科の中でこれらの内容を学習する機会はありませんでした。文部科学省では、小学生からプログラミング的思考を育成し、21世紀に求められるIT社会に適応できる人材を育てることを目的に、2020年度より実施される新学習指導要領で小学校のプログラミング教育の必修化を発表しました。

諸外国の事例等から、プログラミング教育を通じて高い論理的思考力が身につくと言われている一方、国語や算数・数学が不得意であってもプログラミング能力が優れている人は数多く存在するため、国語の論理的思考力や算数の論理的思考力と、プログラミングで求められている論理的思考力は別モノという考え方があります。そのため、これからの社会において欠かせないプログラミングにおける論理的思考力を習得するためには、プログラミングを扱った教育を早期から取り入れることが重要となります。

プログラミングを通じて身に付けられると言われる「論理的思考力」とは具体的にどういったスキルなのでしょうか

文部科学省は、「自分が意図する一連の活動を実現するために、どのような動きの組合せが必要であり、一つ一つの動きに対応した記号を、どのように組み合わせたらいいのか、記号の組合せをどのように改善していけば、より意図した活動に近づくのか、といったことを論理的に考えていく力(プログラミング的思考)(「小学校段階におけるプログラミング教育の在り方について(2016)」より)」と述べています。 我々が日頃から一つの目的を達成させるためには、「順番」を考え、その時の状況を鑑み(「場合分け」)、同様の動作を「繰り返し」行うことが多いと思います。

コンピュータの世界で言えば、例えば、「2+2+2+・・・」と答えを導く方法もあれば、「2をN回足す」と短くする方法も考えられます。子ども達がある目的を実現させるために、コンピュータのプログラミングのツールを使いながら「順番」・「場合分け」・「繰り返し」というプロセスを考え、何度も実行や失敗を経験しながら、最終的に思う通りに何かを動かしたり結果を表現したりする手段を考える能力がプログラミングで求められている論理的思考力と認識されています。

また、プログラミング言語は一つの“言葉”です。日本語で、「机の上にボールがある。」と表現する場合、プログラミング言語では「机を出現させる指示」を出し、「ボールを置く座標を決める」ことで表現することができます。プログラミング言語も日本語と同じように、言語による表現方法の一つだと捉えて教育現場に取り入れることは、コンピュテーショナル・シンキングとしての論理的思考力を養うために大事な観点と考えます。

プログラミング教育はどのように既存の教科に取り入れていくべきでしょうか

「順番」・「場合分け」・「繰り返し」などのプログラミングの要素が、どの教科・単元の学習内容に当てはまるのかをしっかり見極めることがとても重要です。

しかし、新学習指導要領への移行期間である現在は、どの教科・単元にプログラミングの要素が関係しているかを探す準備期間と考えていただければと思います。新学習指導要領では、小学5年生の算数・正多角形の単元で、プログラミングを用いて正多角形を描きながら、角度と角や辺の数の関係を見出すことや、6年生の理科・エネルギーの単元で、電気の性質や働きを利用した道具があることを捉える学習でプログラミングを扱うことが例示されています。例えば理科の学習の場合、人が通ったら電気がつき、人が通った数秒後に電気を消すという仕組みは、実生活において数多く見られる事例ですが、これはプログラミングによって制御されているということを知り、この仕組みを実際に体験させながら学ばせる方法が考えられます。

その他にも、音楽では何秒演奏したら繰り返す・止める、といった曲の規則性や、図画工作では、児童が描いた魚の絵をどうしたら泳がせられるか、といった表現活動もプログラミングの要素と関連付けられます。プログラミングを各教科・単元に取り入れる活動は、これから広く発展していくことでしょう。

プログラミング教育をする際、大切なことって何かありますか?

プログラミング教育では、当該の教科・単元の目的を理解することは勿論ですが、アクティブ・ラーニングを意識することがとても大切です。さらに、教員の発話の仕方と授業時間の管理が重要です。一人一台のタブレット端末の環境ですと、子ども達は、個々に作業をしてしまいがちで、「できた! 見て!」とプログラミングの結果を個々に示したがります。しかし、どのように考えて、どのような過程を経てプログラミングを完成させたのか、子ども達同士で対話し、共有する場面をしっかりと設けないと、不得意な子は置いていかれたり、得意な子は自分の考え方のみに固執してしまったりするなど、深い学びが得られなくなってしまいます。

例えば、プログラミングが得意な子と、そうでない子を隣同士にした上で、自分の活動は15分、残りの5分間で隣の子と話し合うなどすることで、全員に「動いた!できた!」という体験をさせあげましょう。また、自分の最初の考えと、他者と考え方を共有した後では、自分の考え方がどう変わったかを確認することも重要なポイントです。

その他、授業の進行において大切なことは、教員は終始、前に立って技術を教える必要はなく、子ども達の間に入ってサポートしてあげる体制が良いでしょう。子ども達同士で対話させ、個々の手段を共有させる時間を設けることで、プログラミングの論理的思考力や技術はもちろん、コミュニケーション力も養えるなど、教員の期待以上の児童の振る舞いが見られることでしょう。

VSNのみなさんへ

御社のプログラミング講師 無料派遣サービスの取り組みは、子ども達はもちろん、教員の指導力向上にも大きく貢献しているのではないでしょうか。プログラミングのノウハウを得ることで、教員のみなさまは、各教科・単元にプログラミング教育を導入するイメージがしやすくなると思います。この活動によって、VSNさんはより多くの方に親しまれ、教育分野でも大きな功績を残すことでしょう。

引き続き応援しています。 2020年へ向けて教育現場に大きなイノベーションを起こしてまいりましょう。

国立大学法人東京学芸大学 自然科学系 技術・情報科学講座 情報科学分野
准教授北澤 武先生
東京工業大学大学院社会理工学研究科人間行動システム専攻博士後期課程修了。博士(工学)。

私立小学校教員、首都大学東京大学教育センター准教授、東京未来大学モチベーション行動科学部准教授を経て、2013年10月1日より東京学芸大学自然科学系技術・情報科学講座情報科学分野准教授。 公益財団法人パナソニック教育財団 専門委員、神奈川県立生田高等学校 評議員,東京都立戸山高等学校 SSH運営指導委員,公立小中学校ICT教育環境整備支援事業(東京都事業)有識者。

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